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OREXIN RECEPTOR ANTAGONISTS

眠りへの切り替えを
助けるお薬

不眠症のお薬の一つに、「オレキシン受容体拮抗薬」があります。
脳を目覚めた状態に保つ物質「オレキシン」の働きを弱めて、覚醒から睡眠への切り替えを助けるお薬です。
日本で使われている4つのお薬を、添付文書(国の承認にもとづくお薬の公式な説明書)の内容に沿ってご紹介します。

HOW IT WORKS

オレキシンと「目覚めのスイッチ」

目覚めているとき オレキシン A・B 受容体 OX1R・OX2R 覚醒 ON お薬を飲んだとき オレキシン A・B 受容体をふさぐ オレキシン受容体拮抗薬 睡眠へ
わかりやすくするための模式図です。

覚醒のしくみだけに働く

オレキシンは、脳を目覚めた状態に保つはたらきをもつ脳内の物質です。オレキシンA・Bが、脳の中の「オレキシン1受容体」と「オレキシン2受容体」に結びつくことで、覚醒が保たれます。

オレキシン受容体拮抗薬は、この2つの受容体の両方に、オレキシンが結びつくのを妨げます。添付文書では、これにより脳を覚醒の状態から睡眠の状態へ移行させると考えられる、と説明されています(4剤とも同じしくみです)。

「眠らせる」というより、「目覚めのスイッチを切って、眠りに入りやすくする」イメージのお薬です。

反対のしくみのお薬もありますナルコレプシーの新しいお薬「オーゼイフル」は、オレキシン2受容体を活性化して覚醒を促すお薬です(このページのお薬とは逆の働きです)。
DIFFERENCE

これまでの睡眠薬との違い

これまでの多くの睡眠薬

多くの睡眠薬(ベンゾジアゼピン受容体作動薬など)は、脳の神経の働きを抑える物質(GABA)の作用を強めて、脳全体の働きを鎮めることで眠りを促します。

オレキシン受容体拮抗薬

脳全体を鎮めるのではなく、覚醒を保つしくみ(オレキシン)に絞って働き、覚醒から睡眠への切り替えを助けます。しくみが違うため、効き方や副作用の出方も異なります。

※どちらのお薬にも、それぞれ良い点と注意点があります。どのお薬が合うかは、不眠のタイプや体の状態、ほかのお薬などをふまえて医師が判断します。

LINEUP

4つのお薬の比較

商品名(一般名)錠剤の種類添付文書の用法・用量(成人)CYP3Aを強く阻害するお薬との併用
ベルソムラスボレキサント 10mg・15mg・20mg 1日1回20mg、高齢者は1日1回15mg
就寝直前に飲む
併用禁忌(一緒に使えない)
デエビゴレンボレキサント 2.5mg・5mg・10mg 1日1回5mg(症状により適宜増減。10mgを超えない)
就寝直前に飲む
禁忌ではないが慎重に判断。併用する場合は2.5mg
クービビックダリドレキサント 25mg・50mg 1日1回50mg(状態に応じて25mg)
就寝直前に飲む
併用禁忌(一緒に使えない)
ボルズィボルノレキサント水和物 2.5mg・5mg・10mg 1日1回5mg(症状により適宜増減。10mgを超えない)
就寝直前に飲む
併用禁忌(一緒に使えない)

※表は横にスクロールできます(スマートフォン)。CYP3Aを強く阻害するお薬には、一部の抗生物質(クラリスロマイシン)、抗真菌薬(イトラコナゾールなど)、HIVのお薬(リトナビル)、新型コロナウイルス感染症の飲み薬(エンシトレルビル)などがあります。

DETAILS

それぞれのお薬

飲み薬

SUVOREXANT

ベルソムラ

スボレキサント

ベルソムラ錠10mg・15mg・20mg (2014年承認。日本で最初のオレキシン受容体拮抗薬)
製造販売元:MSD、販売元:第一三共

対象
不眠症。二次性不眠症(ほかの病気が原因の不眠)への有効性・安全性は確立していません。
飲み方
1日1回20mg、高齢者は1日1回15mgを、就寝直前に飲みます。CYP3Aを中程度に阻害するお薬と一緒に使う場合は、10mgへの減量を考えます。
主な副作用
傾眠(眠気)、頭痛、浮動性めまい、疲労、悪夢など(いずれも1〜5%未満)。
一緒に使えないお薬(併用禁忌)
CYP3Aを強く阻害するお薬:イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビルを含む薬、エンシトレルビル(新型コロナの飲み薬)など。
参考
血中濃度が最も高くなるまで約1.5時間、半減期は約10時間(添付文書の日本人データ。承認用量より多い40mgを1回飲んだときの値)。
飲み薬

LEMBOREXANT

デエビゴ

レンボレキサント

デエビゴ錠2.5mg・5mg・10mg (2020年承認)
製造販売元:エーザイ

対象
不眠症。
飲み方
1日1回5mgを就寝直前に飲みます。症状により適宜増減しますが、1日1回10mgを超えません。
主な副作用
傾眠(眠気)10.7%、頭痛4.2%、倦怠感3.1%(いずれも3%以上)。
飲み合わせ
CYP3Aを阻害するお薬(中程度・強力)は併用禁忌ではありませんが、使うかどうかを慎重に判断し、併用する場合は1日1回2.5mgにします。
使えない方
重度の肝機能障害のある方。
参考
血中濃度が最も高くなるまで約1.5時間、半減期は約47時間(10mgを14日間続けて飲んだときの値)。
飲み薬

DARIDOREXANT

クービビック

ダリドレキサント

クービビック錠25mg・50mg (2024年承認)
製造販売元:ネクセラファーマジャパン、販売元:塩野義製薬

対象
不眠症。
飲み方
1日1回50mgを就寝直前に飲みます。状態に応じて1日1回25mgにすることもできます。CYP3Aを中程度に阻害するお薬と一緒に使う場合は25mgにします。
主な副作用
傾眠(眠気)(3%以上)、頭痛・頭部不快感、倦怠感・疲労、悪夢(1〜3%未満)。
一緒に使えないお薬(併用禁忌)
CYP3Aを強く阻害するお薬:イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビルを含む薬、エンシトレルビル(新型コロナの飲み薬)など。
使えない方
重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある方。
参考
血中濃度が最も高くなるまで約1.4時間、半減期は約7時間(50mgを飲んだ初日、高齢でない方の値)。高齢の方(25mg)では約12時間。
飲み薬

VORNOREXANT

ボルズィ

ボルノレキサント水和物

ボルズィ錠2.5mg・5mg・10mg (2025年承認・2025年11月発売)
製造販売元:大正製薬、販売元:Meiji Seika ファルマ

対象
不眠症。
飲み方
1日1回5mgを就寝直前に飲みます。症状により適宜増減しますが、1日1回10mgを超えません。CYP3Aを中程度に阻害するお薬と一緒に使う場合や、中等度の肝機能障害のある方は、1日1回2.5mgにします。
主な副作用
傾眠(眠気)(3%以上)、悪夢(1〜3%未満)、倦怠感・浮動性めまい・睡眠時麻痺など(1%未満)。
一緒に使えないお薬(併用禁忌)
CYP3Aを強く阻害するお薬:イトラコナゾール、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビルを含む薬、エンシトレルビル(新型コロナの飲み薬)など。
使えない方
重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある方。
処方日数
新しいお薬のため、2026年10月末までは1回14日分までの処方となっています(添付文書の保険給付上の注意)。
参考
血中濃度が最も高くなるまで約0.5時間、半減期は約2時間(10mgを1回飲んだときの値)。

※副作用は添付文書の「その他の副作用」から主なものを抜き出したもので、すべてではありません。%は添付文書に記載された頻度です。半減期は試験の条件によって異なるため、4剤を単純に比べることはできません。
※各お薬のカラーは、製造販売元などの公式製品サイトの配色をもとにしています(ベルソムラ・デエビゴ:米国の製品サイト、クービビック:同じ成分のカナダの製品サイト、ボルズィ:販売元の医療関係者向け製品サイトの画像)。各社のロゴではなく、日本での製品デザインとは異なる場合があります。

POINTS

使うときに大切なこと

  • 寝る直前に飲み、飲んだら床につきましょう。4剤とも「就寝の直前」に飲むお薬です。眠っている途中で起きて仕事などをする予定があるときは飲みません。
  • 食事の直後は避けましょう。食事と同時や食後すぐに飲むと、寝つくまでの効果が出るのが遅れるおそれがあります。
  • 翌朝の眠気に注意し、車の運転などは控えてください。翌朝以降も眠気や注意力・集中力の低下が残ることがあります。ベルソムラ・デエビゴ・クービビックでは、自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないよう添付文書に記載されています。ボルズィでも、状態を見ながら運転などをしてよいか慎重に判断することになっています。
  • 飲んでいるお薬は、必ずお知らせください。ベルソムラ・クービビック・ボルズィには、一緒に使えないお薬(一部の抗生物質・抗真菌薬・新型コロナの飲み薬など)があります。デエビゴも、一緒に使うと量の調整が必要なお薬があります。
  • 夢や金縛りのような症状が出ることがあります。悪夢や、睡眠時麻痺(いわゆる金縛り)などが副作用として記載されています。気になる症状があれば、ご相談ください。
  • 年齢について。4剤とも、小児等を対象とした臨床試験は行われていません。中学生・高校生の方の不眠や、寝つけない・朝起きられないといったお悩みは、生活リズムの見直しを含めて担当医にご相談ください。
  • ナルコレプシーのある方へ。ナルコレプシーやカタプレキシー(情動脱力発作)のある方では、症状を悪化させるおそれがあると記載されています。過眠症の治療中の方は、必ずお伝えください。
  • 漫然と続けず、医師と相談しながら使います。症状が良くなったら、続けるかどうかを検討することになっています。4剤とも「習慣性医薬品」に指定されているので、量の調整や中止は自己判断せず、医師と相談しながら行います。
REFERENCES

出典(各お薬の添付文書)

  • ベルソムラ錠10mg・15mg・20mg 添付文書(2026年8月改訂 第6版)
  • デエビゴ錠2.5mg・5mg・10mg 添付文書(2025年12月改訂 第4版)
  • クービビック錠25mg・50mg 添付文書(2026年10月改訂 第5版)
  • ボルズィ錠2.5mg・5mg・10mg 添付文書(2025年11月改訂 第2版)

掲載日:2026年10月26日(上記の版で内容を確認しています)。添付文書は改訂されることがあります。最新の情報は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の添付文書情報でご確認いただけます。

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このページの内容は、各お薬の添付文書にもとづく一般的な情報です。お薬の使用は、医師の診察のうえで判断します。
監修:福井愛育病院 頭痛・睡眠障害(起床困難、過眠)専門外来