福井愛育病院のお産

福井愛育病院のお産に対する基本的な考え方を教えてください。

当院では妊婦さん自身の「産む力」最大限に発揮してもらうために、できるだけ不要な医学的介入は避けています。基本的にお産が問題なく進んでいる場合には、多少時間がかかっても薬物を使用したりすることはありません。 そうはいってもお産は突然状況が変わることも希ではありません。何の前ぶれもなしに胎児の状態が悪くなったり、妊婦さんに思わぬ合併症が起こることもあります。そういう意味ではお産は全て救急疾患ともいえます。当院では万が一に備えて、いつでも24時間帝王切開が行える体制でお産の進行を見守っています。赤ちゃんの状態が心配な場合には小児科医師も手術場に入り、直ちに赤ちゃんの治療が行えるよう待機しています。 分娩を自然の経過に任せるには、万全の体制の下にいつでも臨機応変に対応が可能であることが必要と考えています。 以下のような場合には、自然の経過に任せるのは危険な場合が多く、適切な医学的補助が必要になります。当院でのおおまかな治療方針について述べます。

骨盤位(さかご)

骨盤位は通常の分娩と異なり、胎児の部分で最も大きい頭が最後に出てきます。従って足~臀部~胴体が出た後に頭が出てこない可能性が有るという点で危険です。また骨盤位では分娩経過中に胎児の足やお尻の隙間から臍帯が降りてくることがあり、臍帯が圧迫を受けると胎児には酸素が行かなくなり危険です。以上の理由から骨盤位はあらかじめ日時を決めて帝王切開で分娩することが多くなります。(経産婦で、条件がいい場合に限りご本人が希望されれば経腟分娩を試みることはあります。)

胎児の位置が決定するのはおおむね妊娠33週~34週ごろです。それ以前の骨盤位は異常ではありません。自然に頭が下になることが多いのです。あまり早い時期から「さかごといわれた。どうしよう。」と悩む必要はありません。最終的には約3パーセント程度の妊婦さんが骨盤位で臨月を迎えます。

前回の分娩が帝王切開の方

前回の分娩が帝王切開である場合、子宮に傷がついているため強い陣痛が来ると子宮が裂けることがあります。約1パーセントから3パーセントの頻度で破裂が起こると言われています。破裂が起こると胎児は非常に危険な状態になり、出血が多い場合母体にも危険が及びます。

従って前回の分娩が帝王切開の場合には、陣痛が来る前に帝王切開を行うことが多くなります。経腟分娩に相当の危険を伴うということをご理解されており、種々の条件が良好である場合に限り経腟分娩を試みることはあります。

予定日を過ぎてもなかなか陣痛が来ない場合

分娩予定日が正しく決められている場合、予定日を2週間以上過ぎると子宮内で胎児が死亡する率が高まってくると言われています。胎盤の機能が低下してくることや羊水が減少して臍帯が圧迫されやすくなることが原因と考えられています。当院では予定日を1週間以上経過した場合には、陣痛が来ていなくても入院していただき胎児の状態を評価しながら適切な時期に薬剤を使用して分娩誘発を行うことがあります。

破水後分娩経過が長引いている場合

破水とは胎児を包んでいる膜(卵膜)が破れて、羊水が子宮から流れ出ることを言います。通常は陣痛が来ていて子宮口が開大しもうすぐお産になるという時期に破水しますが、早い時期に破水しその後有効な陣痛が来ない状態が続きますと徐々に腟内から子宮内に細菌が入ってきます。有害な細菌が赤ちゃんの体に侵入すると赤ちゃんは危険な状態になります。従って破水後ある程度の時間を経過してもお産が進まない場合には陣痛促進剤を使用して分娩を促進することがあります。

赤ちゃんに異常があった場合はどうなるのですか?

早産や多胎、妊娠中毒症など何らかの異常妊娠の場合はもちろんのこと、順調な妊娠経過でお産になった場合でも、赤ちゃんにはいろんな異常が起こることがあります。当院では赤ちゃんの異常に対しては早期発見早期治療を心がけています。場合によっては新生児治療室で集中的な管理が必要になる場合もあります。

当院小児科では未熟児、黄疸、呼吸不全、先天異常、感染症等、新生児の多くの病気に対応しています。特に先天性心疾患については、隣接している福井心臓血圧センターと協力して診断から治療まで一貫したフォローを行っています。 下に当院で新生児治療室に入室した赤ちゃんのうちわけを示します。(数字は%を示しています。)

ただし全ての疾患に対して当院のみで対応するのは不可能であり、心臓以外の外科手術が必要となる先天異常や極端に未熟な週数の早産児(妊娠26週に満たない場合など)のような特殊な場合は連携している専門施設(福井大学医学部附属病院、県立病院、金沢医科大学附属病院など)に適時依頼しています。

夫立ち会い分娩は可能ですか?

夫立ち会いのご希望がある場合は、原則的に後期の両親学級はご夫婦で受講していただくことを条件とさせていただいています。お産に対するある程度予備知識を身につけていただいて心の準備をしていただくことが目的です。里帰り出産の方などで受講が不可能な場合は個別にご相談下さい。

お部屋はどんな種類があるのですか?

シャワーやトイレ・冷蔵庫を完備した一般個室から、ご家族でゆっくり過ごしていただける和室付き特別室まであります。

  • 特別室
  • 個室

入院費用について教えてください。

入院費は、お部屋の種類や入院日数や合併症の有無や赤ちゃんへの治療が必要かどうかなどによって変わってきます。 特に異常が無い場合、一般個室入院で初産婦の方は産後5日目退院で42~48万円程度、経産婦の方は産後4日目に退院で40~46万円程度です。 特別室に入院された場合はもう少し高くなります。

無痛分娩は行っていますか?

無痛分娩は硬膜外チューブと呼ばれる細い管を背中から挿入し、そこから陣痛の痛みを司る神経のまわりに麻酔薬を注入する「持続硬膜外麻酔」という方法で行います。 当院では無痛分娩は医学的に必要な方に限って行っています。例えば妊婦さんが心臓の病気のため過度の痛みに耐えにくい場合や、妊娠中毒症のため血圧が高く陣痛の痛みでさらに血圧が上がってしまう場合や、痛みのためにパニックになってしまいうまくお産できない場合などです。

無痛分娩の利点は、もちろん痛みを和らげることにより苦しみの少ないお産ができることですが、欠点は分娩に要する時間が長くなる傾向がある、いきみがうまくできないことがあり吸引分娩などの補助が必要になることが多い、結果として帝王切開になる率が少し増える、などです。しかし痛みに対する不安が強い方などの場合、硬膜外麻酔により分娩がスムースに進む場合があることも確かです。

多胎(ふたごやみつご)といわれています。未熟児で出産する可能性が高いので未熟児治療が可能な病院でお産するよういわれましたが、受け入れてもらえますか?

当院では双胎の方もたくさんお産されています。やはり未熟児で生まれることもありますが、みな当院の新生児治療室で治療を受けて元気に退院されています。 ちなみに平成24年度は1196件の分娩がありましたが、そのうち17件が双胎の出産でした。

多胎では早くから子宮が大きくなるため母体への負担が重く、異常妊娠であるという認識の下に慎重に経過を診る必要があります。当院では基本的に早期入院・安静を原則としています。早産の予防や、多胎にみられがちな妊娠中毒症の予防が目的です。

双胎の場合、二絨毛膜性双胎(胎盤が2つある)の方はおおむね32週頃に、一絨毛膜性双胎(胎盤が1つしかない)の方はおおむね28週頃に入院して安静にしていただいています。早産の徴候がある場合にはこれよりも早い時期からの入院が必要になります。

多胎の場合一人一人の赤ちゃんはどうしても小さくなりがちですので、未熟児治療室に入ることが多くなります。未熟児の中でも33~34週を超えて生まれた赤ちゃんは呼吸状態が比較的安定していることが多いので、できればこのころまではお腹の中にいてもらうような目標で治療しています。 分娩については胎児の位置やその他の状況によって患者さんと相談しながら帝王切開にするか経腟分娩にするか個別に判断します。

品胎(みつご)については、福井県の周産期医療の方針により福井県立病院での出産をお願いしております。当院で3人同時に人工呼吸器を稼働させた場合に、先天性心疾患を有する赤ちゃんの受入が不可能になるためです。ご了承下さい。